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スタートアップが大企業に勝つための「戦わない」戦い方


大手メディアでもスタートアップ関連の情報を取り上げるところが増えており、以前より注目を集めているスタートアップ業界。サービスの内容や資金調達の状況、どの程度市場性がありそうか、伸びているのか、といった情報は大企業側にもアクセスしやすくなっていて、スタートアップが市場を切り開いた後に大企業が後発で参入なんてことを最近よく見かけるような気がします。

少し古い本ですが、「柔道ストラテジー」というハーバードビジネススクールの教授が書いた、過去にスタートアップや中小企業がいかに大企業と対峙し勝利を収めてきたかが書かれている本を読みました。柔道ストラテジーのメソッドを簡単に説明すると、大企業に敵だと思われない、大企業と正面で戦わない、戦いになったら相手の強みを「弱み」に変えるような戦い方をする、という感じ。

いくつか面白い事例があったので少し紹介してみます。

C2C戦争で勝利を収めたイーベイ

日本ではヤフオクがメジャーですが、海外ではオークションサイトいえばイーベイ。後発の大手企業の攻撃をかわし続けてきた結果、今の強大なポジションを築いています。

1998年にイーベイのIPO直後にヤフーが大量のトラフィックと出品料・取引手数料無料を引っさげ、オークションに参入してきました。イーベイも同様に価格で対抗するか検討されましたが、課金によって商品の質が保たれていると分析。価格面の全面対決を避ける決断を行いました。そのかわり、ヤフーが提供する簡易な商品登録方法やわかりやすいチュートリアルを取り込み、自社のサービスを改善したり、ヤフーのリソースが割けない草の根マーケティングキャンペーンを実施し、ヤフーという脅威を断ち切りました。

コカコーラが身動きができない隙に成長したペプシ

こちらはかなり昔の話。第一次世界大戦の終戦直後、アメリカ全土で独占的な支配状況を作っていたコカコーラに対し「まったく商売が成立しない」状況だったペプシ。ペプシが起死回生の手として選んだのは、値段はコカコーラと同じだが、中身が2倍のコーラを販売することでした。大恐慌時代の消費者はもちろんこれを大歓迎。一気に売上が倍増、マーケットシェアも急激に抑え始めるのですが、この状況をコカコーラは22年も放置することになってしまいます。なぜか。

当時、コーラはフランチャイズ権をもつ1,000を超えるパートナー企業たちによって瓶詰めされていました。ペプシ同様大きなボトルを採用することになると、既存設備の償却と新規設備の導入が必要となりパートナー企業の負担が一気に増加してしまいます。コカコーラが手をこまねいている間にペプシが大躍進を遂げる結果となりました。

紙メディアの弱点を突き成長したCNET

1990年代前半、テクノロジーメディアはジフ・デイビスやIDGなどの発行する紙媒体が中心でした。そこに風穴を開けたのは誕生したばかりのオンライン専業テクノロジーメディアのCNET。強敵が持つ資産やパートナーを負債に変え、たくみに動きを封じながら進化してきました。

CNETは速報性と情報量、さらにユーザー志向の媒体つくり上げることで順調にトラフィックを伸ばしていきます。一方で競合の紙メディアは優良な読者を抱え、高い広告料を維持してきましたがネットに進出することは既存のビジネスモデルを犠牲にする必要が生じます。既存の利益を維持したいという気持ちからネットへのフォーカスが遅くなり、CNETの躍進を結果的に放置。その間、さらなるクオリティの向上とデータベースなど技術が向上していき、追いつけないほど差が開いていきました。

最終的にジフデイビスは部門ごとに切り離され、ネットのメディアとして運営していたZDnetはCNETに買収されることになります。

と、こんな感じで事例がメソッドごとに整理して書かれていて、最後の方は大企業がスタートアップを資本力で倒す「相撲ストラテジー」なんてのがまとめられていてなかなか面白いです。まだの方はぜひ読んでみてはいかがでしょうか。

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イノベーションよりも金になる模倣:コピーキャット読書メモ

photo credit: Paolo Margari via photopin cc

イノベーションよりイミテーション?

経済がグローバル化し、情報の入手コストが格段に低くなっている現在、新しいモノやサービスが模倣されるスピードが格段に上がっています。アップルのiPhoneのように世界を変えるイノベーションが礼賛されるのは当然なのですが、ビジネスとして考えるとイノベーションよりも、イミテーション(模倣)の方が確実性が高いよね、ということが書かれているこの本(コピーキャット: 模倣者こそがイノベーションを起こす)を読んでいます。まだ途中なのですが気になった箇所をメモ。

製品のコピースピードは年々上がっている

一九世紀のイノベーションが発展途上国で利用されるようになるまでには一〇〇年かかったが、二〇世紀後半になると、発明がコピーされるのに二年もかからなくなった。模倣された製品が広まるまでにかかる期間は、一八七七~一九三〇年は平均で二三・一年だったのに対し、一九三〇~三九年は九・六年に縮まり、一九四〇年以降は四・九年になった。模倣者が市場に参入するまでの期間も二・九三%短くなっている。模倣のラグは一九六一年には二〇年だったが、一九八一年になるとそれが四年になり、一九八五年には一~一・五年にまで短縮した。

模倣は利益を生み出す

生産性を大きく向上させるのは、イノベーションそのものではなく、その後に加えられる改良である。そうだとすると、模倣者はたいてい、オリジナルよりも優れていると考えられるものを、オリジナルと比べて格安な値段で顧客に提供できる有利なポジションにいる。模倣するには、イノベーターがとった手順のすべてとはいかないまでも、その多くをたどり直さなければいけないので、相応のコストがかかる。しかし、模倣コストのほうが低いことは明らかであり、ほとんどの場合はイノベーターが投じたコストの六〇~七五%程度ですむ。利益率の低い時代には、この差は大きい。

模倣からイノベーションは始まる

ペプシコの元シニア・バイスプレジデント兼トレジャラーのライオネル・L・ノウェルは言う。「イノベーションを起こそうとしているときであっても、他人がどんなことをしているのかも知りたい。面白いことに、一部のイノベーションは模倣から始まっている。模倣しようとしているときでさえ、原型をさらに進化させて、イノベーションと呼んでもよいくらいのものを生み出さなければいけないと思っている」。P&Gの元最高技術責任者、G・ギルバート・クロイドの話では、独自性を生み出すのは新しい要素ではなく、その組合せ方だという。

イノベーターよりも成功する模倣者

イノベーションの真のコストを分析に反映させた場合も、また、独占が永遠に続くというような非現実的な前提を置くシミュレーションを使わずに、現実に即した設定を行った場合も、模倣者のほうがイノベーターよりはるかに大きな成功を収めている。イノベーションの優位性を支持する証拠を見つけている研究でさえ、「平均的な効果は、一部の研究者が示唆しているほど劇的なものではない」こと、そして、「今日のイノベーションには、これまでのような競争優位はないかもしれない」ことを認めている。